基礎編④~認知症原因疾患:脳血管障害後遺症・血管性認知症~

認知症原因疾患として次のような疾患があります。

  • アルツハイマー病・アルツハイマー型認知症
  • レビー小体病・レビー小体型認知症
  • 前頭葉機能障害・前頭側頭型認知症
  • 脳血管障害後遺症・血管性認知症
  • 老化・加齢現象

脳血管障害後遺症・血管性認知症

脳梗塞、脳出血、皮質下白質病変などの脳血管障害によって起こった後遺症としての高次脳機能障害が、認知症状態(著しい生活の混乱)を起こさなければ、単に“後遺症”です。

さまざまな要因(後遺症が重度であったり、生活環境が厳しかったりなど)で生活に著しい混乱が起きると、血管性認知症状態となります。

間違えないでいただきたいのは、“血管性認知症”という特別な病気があるわけではないということです。

血管障害の部位、大きさによって症状は全く異なりますので、たとえ認知症状態になったとしても、それぞれの人で症状が全く違ってくるのです。共通の“認知症”という病気の症状があるわけではないのです。

たとえば、脳の後ろのほうで障害が起これば“認知機能障害”が主で、脳の前のほうで起これば“行動障害”が主となり、脳の基底核というところを中心に起これば、パーキンソン病の思考緩慢に似た状態になります。もちろん、それぞれで治療方法は全く異なります。

麻痺の見られない脳血管障害は特に高齢者では珍しくないので、脳梗塞=麻痺のように考えないようにしてください。

皮質下白質病変という高齢者に多い血管障害では、症状が徐々に進行していって、まるで脳の変性疾患のように見えることもあります。

必ず、血管障害の部位、数、大きさ、そしてそれらがもたらす高次脳機能障害をしっかりと診断してもらうことが、他のどの脳の病気よりも大切です。

アルツハイマー病などの脳の変性疾患では、単純な脳のMRI画像はあまり役には立ちませんが、この“血管障害後遺症”こそは、MRI画像が重要な検査になります。

後遺症は症状が進行しないで固定すると、場合によっては数十年も同じ状態が続いて介護者を苦しめます。また、後遺症自体は固定しても、環境が劣悪であると生活の混乱という状態は進行していくこともありえます。そう言う点も、しっかり診断してもらう必要があります。 

≪特徴的症状≫

単一の病気ではないので、特徴的症状は、血管病変の場所、大きさ、数によって全く異なります。患者さんごとにしっかりと症状を診断してもらうことが大切です。

間違っても、血管性認知症の症状だというような、安直な診断を受けないように注意してください。患者さんは、自分のつらさを理解してもらえていないと思い、心を閉ざしていってしまいます。そうなると、いわゆる“周辺症状”というようなものが出てきて、「認知症」という偏見にさらされてしまいます。