院長紹介・理念

安曇野ななき診療所院長

岸川 雄介

諦めるわけにはいかない!

──認知症という病気はありません──

認知症という病気はありません。

ありもしない病気なのですから、認知症にかかったら、夜も昼もうろつき回り、大声を出したりわけもなく怒ったりするように人格が壊れていく、わけではありません。

認知症は症状群です。

脳機能低下によって生活がひどく混乱した状態です。脳機能低下が認知症なのではなく、適切な治療を行えば認知症状態になることを防ぐことができます。

生活がひどく混乱した状態ですから、患者さんだけではなく家族や介護者も苦しみます。

この苦しみも適切な治療で改善させることができます。不治の病の精神病だからとあきらめて、いたずらに大人しくさせることだけ考えて強い薬を使い、むやみに収容することはかえって患者さんだけではなく介護者の苦しみも大きくさせます。

私たちの診療所では、たとえ“もの忘れ”などの認知機能障害あっても、いかに認知症状態にならないようにするか、もうすでにひどい認知症状態になっている人のその症状をいかに軽くして本人・家族の苦しみを軽減していくかを考え、治療を行っていきます。

治療の目的は「患者・介護者相互の生活改善」です。

まず、認知症状態なのかどうかを家族や介護者からの詳細な問診を行って判断します。認知症状態は生活の混乱なので、診察室で判断することはできないからです。次に、患者さんの脳機能障害、原因となっている病気や環境因などを診断していきます。脳の機能障害は脳だけではなく、からだ全体の状態や生活環境も関わっています。脳は体の一部で認知症状態は生活の問題ですから、その全体を診断する必要があります。

原因、症状、生活状態が把握できたら治療プランを立てます。からだを含む病気自体は私が治療を行いますが、生活状態の改善は私だけではできませんので、それぞれのご家族の事情を考えながら友人、知人、仲間などの協力が得られればお願いし、地域福祉担当者にも協力をお願いし、全員で相談しながら行います。

私がこの診療所を開設したのはこのような理念に基づく治療のための、地域の協力者や理解者との協働作業の連携がやっと実現できるようになったからです。診療所には多くの協力者も一緒に来られます。それも患者さん・介護者を勇気づけてくれます。

認知症状態になったからといって、なんで人生をあきらめ、生活を取り上げられ、大人くさせられて収容されないといけないのか。自分の自分なりの人生を全うさせようと闘って何がいけないのか。それに真摯に答え、今できる範囲での具体的方法を提示していくこと、それが専門医である私の仕事と考えています。

もちろん、いつも理想通りにうまくいきわけではなく、諦めなければならないことも多いです。でも、私が先に諦めたら、誰が力になれるのかと自分に言い聞かせながら日々格闘しています。

諦めるわけにはいかない!それが理念かもしれません。


●院長プロフィール

安曇野ななき診療所 院長

岸川 雄介 

 (きしかわ ゆうすけ) 

 昭和23年10月2日生

■資格

 医学博士、日本精神神経学会 認定医

 日本老年精神医学会 指導医

■著書

 ・「痴呆の介護に困ったら」(2003 ワールドプランニング)
 ・「すぐに役立つ家族のための認知症介護」監修。
      第4章執筆(2010 誠文堂新光社)
 ・「認知症 なぜこうなるの?
     どうしたらいいの?認知症機能篇
           (2014 SEC出版)他

■診断ソフト

 かかりつけ医・ケアスタッフ向け
  “認知症疾患診断・治療アドバイス(iDEMENT)”開発

■安曇野市地域での活動

  • 患者・介護者、地域福祉スタッフ、かかりつけ医を中心とした
    「認知症・認知症疾患早期発見・治療ネットワーク」構築を主導。
  • 認知症予防活動を住民主導で展開していく活動の支援・継続中。
  • 各地での講演会を通じた啓発活動。
  • 「認知症にバリアフリーな地域づくり」活動を提唱、実現へ向け住民と共同作業進行中。
  • 地域福祉スタッフとの定期的勉強会継続中。
  • 「脳機能障害から見た認知症介護マニュアル」共同開発中。
  • 安曇野FM “もの忘れ外来パートⅡ” 放送中(水曜 朝10時15~30分) 

●趣味

フルート、登山、乗馬

サッカー観戦(高校以来のファンで常に地元Jリーグサポーター。現在は松本山雅サポーター)