基礎編④~認知症原因疾患:レビー小体病・レビー小体型認知症~
認知症原因疾患として次のような疾患があります。
- アルツハイマー病・アルツハイマー型認知症
- レビー小体病・レビー小体型認知症
- 前頭葉機能障害・前頭側頭型認知症
- 脳血管障害後遺症・血管性認知症
- 老化・加齢現象
レビー小体病・レビー小体型認知症
脳の神経細胞の中に、レビー小体という物質が蓄積して、神経細胞が死滅していく病気です。
脳のどの場所の神経細胞にこの物質が蓄積していくかで、違う病気になります。
びまん性レビー小体病、パーキンソン病、アルツハイマー病にそっくりな症状を示すもの、など様々な脳機能低下、症状を示します。
初期から認知症状態を示すことは少なく、幻視、視空間認知障害などで他の疾患とは異なる状態を示しますが、だからと言ってそれで認知症状態になるわけではなく、多くは、しっかりと独立した生活を営むことできます。
それでも、心無い医療者などからは「認知症」扱いされますが、それは、認知症状態と疾患特有の症状との区別がきちんとできていないからです。
このような疾患の中で認知症状態(著しい生活の混乱状態)となったものをレビー小体型認知症と呼ぶべきなのですが、今はレビー小体型認知症という呼び方が普通になって、そのような一つの疾患があるかのようになっています。厳密に区別されるべきでしょう。
区別しなければならない理由は次の2つです。
- 診断される本人や家族にとって、認知症なのかそうではないかは非常に大きな問題で、もちろん、治療の仕方も全く違ってくる。
- たとえ、認知症状態となっても、いわゆるアルツハイマー病を想定した「認知症」とはかなり違う症状を示す
「認知症という病気はやがて幻覚や妄想を示すようなるものだ」という誤解から、この疾患に幻視があるからというだけで「認知症」と診断してしまう過ちを犯す人もいます。
いくら、レビー小体型認知症という診断があっても、その国際的診断基準には、“第一に、認知症状態である”ことが基本になっています。幻視があるだけで認知症状態などとは診断されません。
考えてみてください、30代の人が幻視症状を示しただけで「認知症という病気である」と診断されるでしょうか?
なぜ高齢者だと「認知症という病気」と診断されるのでしょう。
真剣に診断して治療を行おうと考えていないため、偏見に囚われてしまうからだとしか考えられません。
どの疾患でも言えることですが、疾患自体の姿と、疾患ごとに異なる生活の混乱する症状(認知症)とは、きちんと区別しておかないと治療を間違えてしまいます。
≪特徴的症状≫
①症状や意識レベルの強い変動性
レビー小体病に属する疾患のほとんどに当てはまる特徴です。これが介護者をひどく混乱させますので、知っておくことはとても大切です。例えば、急に認知症が悪くなったとあわてて強い薬などを処方してもらわないように、このことをよく理解してくれる医師に相談することが大切です。
②幻視
おそらく、特徴的な視空間認知障害に由来すると思われ、精神疾患で見られるような強い不安や怯えによるものであることはほとんどありません。淡々としていることが多いです。もちろん例外はありますので、その点もよく診断してもらうべきです。
③迷子
記銘力障害など幅広い認知機能障害が起こらない時期から、自分の家や外出先など慣れたところで方向を間違えて、迷子になりそうになることがあります。おそらく、視空間認知障害、もしくは軽い意識変動や注意障害が初期から出現するからでないかと思われます。大切なことは、たとえそういうことが起こったとしても、俗に言われる「認知症による徘徊」では全くないので、慌てずにこの病気をよく理解していると思われる医師に診てもらって、良い対処方法を考えてもらうことが大切です。
④妄想
軽度の意識レベルの低下を背景として、幻視が元になっている場合や自分の世界に入り込んでいるような内容が多いように思われ、精神疾患に見られるような不安、恐怖などの感情的色彩はあまりないようです。
⑤パーキンソン様運動障害
レビー小体病のうち、パーキンソン病で認知症状態を示すようなったもの(認知症を伴うパーキンソン病ともいう)はもちろんですが、一般にレビー小体病ではパーキンソン病性運障害はよく見られます。振戦よりも、動きの遅くなる寡動や歩行障害、筋固縮現象がよく見られます。
抗パーキンソン薬による治療が必要ですが、幻視を悪化させることもあるため、この病気の、この症状の治療に精通した医師に診てもらうことが大切です。
⑥認知機能障害
思考・反応スピードの低下、注意集中力の低下、意識の変動が原因となっていることが多く、初期はかなり軽く、刺激を与えて意識や注意力を改善させたり、周囲がゆっくりと構えて、思考・反応の結果が出るのにゆっくりと時間をあたえたりすることで改善することが多いです。
初期に、いわゆる認知症状を示すことは少なく、認知機能障害自体の進行も遅いことが多いです。
初期にはアリセプトなどの抗コリンエステラーゼ阻害剤が著効を示すことも多いです。しかし、パーキンソン病性運動障害が出てくるころには、アリセプトを用いることには慎重になる必要があります。
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